本の橋渡し

本の感想を書くブログです。 (たまに映画、美術、音楽についても書ければ良いなと思っております。)

本だからこそ、ハリーの本心が垣間見える━━『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(本)

※本ページはプロモーションが含まれています

この本について

『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(原題:Harry Potter and the Goblet of Fire)は、2000年に原書が出版された、J.K. ローリングによるファンタジー小説『ハリー・ポッター』シリーズの第4巻です。

ホグワーツ魔法魔術学校で行われる、三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)を中心に物語が進んでいきます。
三大魔法学校対抗試合はおよそ700年前に、ヨーロッパの三大魔法学校の親善試合として始まったもので、ホグワーツ、ボーバトン、ダームストラングの各校から代表選手が一人ずつ選ばれ、三人が三つの魔法競技を争うものです。
ハリーは立候補していないにも関わらず、なぜか四人目の代表選手として選ばれてしまい、試合に出場することになります。

物語の中心は三大魔法学校対抗試合ですが、本記事では「ロンとハリーの喧嘩」と「屋敷しもべ妖精たちの自由」に注目して書いていきたいと思います。

 

Amazonの「聴く読書」Audibleの登録はこちらから

 

ロンのハリーへの嫉妬

魔法学校対抗試合の立候補者は「炎のゴブレット」に自分の名前を入れ、ゴブレットから名前が出てきた者が代表選手になります。この年の対抗試合では17歳以上という年齢制限が設けられているため、14歳のハリーは本来なら出場できません。しかし先にも述べたように、立候補していないにも関わらず、炎のゴブレットからハリーの名前が出てきて、ハリーは望んでもいないのに代表選手になってしまいました。

混乱の中、ハリーは自分で名前を入れていないと説明しますが、みんな信じてくれません。信じてくれると思っていた親友のロンにまで、どんな手を使って立候補したのかと疑われる始末、、、そこからケンカに発展していきます。

一方でハーマイオニー(ハリーの親友)は、自分で名前を入れたのではないと言うハリーの主張をすんなりと受け入れてくれました。ハーマイオニーが言うには、ロンは本気でハリーが自分の名前を入れたと思っているのではなく、嫉妬しているのだそう。つまり、いつも注目されているハリーの添え物扱いに耐えられなくなってしまったというのです。

それを聞いたハリーは、いつでも入れ替わってやる、とさらに怒ります。しかし、学年始めの夜にハリーが想像していたことを読むと、代表選手になって活躍し、みんなから賞賛されたいという気持ちは、確かにあったようです。↓

頭の中に次々と輝かしい姿が浮かんだ・・・・・(中略)ホグワーツの代表選手になったハリー・・・・・拍手喝采、大歓声の全校生徒の前で、勝利の印に両手を挙げて校庭に立つ僕・・・・・僕はいま、対抗試合に優勝した・・・・・ぼんやりと霞む群衆の中で、チョウ・チャンの顔がくっきりと浮かび上がる。賞賛に顔を輝かせている・・・・・。
ハリーは枕に隠れてニッコリした。自分にだけ見えて、ロンには見えないのが、とくにうれしかった。

J.K. ローリング『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』静山社〈携帯版〉p.272

皆さんは、ハリーとロンの立場、どちらの方がマシだと思いますか?

私は、ハリーのようにいつもジロジロ見られたり、誰かに命を狙われてビクビクするのは嫌なので、ロンの立場の方がまだ良いと思いますが、、、
やはり、隣の芝生は青く見えるのでしょうか?

自分たちの不幸に気が付けない屋敷しもべ妖精たち

屋敷しもべとは、基本給料をもらわずに裕福な魔法使いや魔女の家庭に仕えている妖精で、主人から服をもらうことで初めて自由の身となります。

ホグワーツでも屋敷しもべ妖精が働いているということを知ってショックを受けたハーマイオニーは、屋敷しもべ妖精の正当な報酬と労働条件を確保するために、「しもべ妖精福祉振興協会」を設立します。

ハーマイオニーは毎晩談話室を精力的に駆け回り、寄付集めなどの活動をしていましたが、みんなは乗り気ではありません。

その様子を見て、ジョージ(ロンの双子の兄の一人)がハーマイオニーに話しかけます。

「連中は幸せなんだ。世界一いい仕事を持ってると思ってる━」
「それは、あの人たちが教育も受けてないし、洗脳されているからだわ!」
ハーマイオニーは熱くなって話し始めた。
J.K. ローリング『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』静山社〈携帯版〉p.339-340

ある日、ハーマイオニーは厨房で働くしもべ妖精たちに、みんなには賃金や休暇、ちゃんとした服をもらう権利がある、と直接訴えかけます。しかし、しもべ妖精たちは給料を貰うことは恥だと思っているらしく、その言葉に喜ぶどころか、怒ってハーマイオニーたちのことを厨房から追い出してしまいました。

そのようなことがあってもなお、しもべ妖精たちのために働きかけるハーマイオニーの姿を見て、彼女はなるべくしてグリフィンドール寮生になったんだと思いました。(勇気あるものがグリフィンドール寮に組分けされます。)

私だったら、しもべ妖精本人たちがこれで幸せと言っているならまぁ良いか、、、と思ってハーマイオニーのような行動は起こせないと思います。

しかしハーマイオニーの言うように、しもべ妖精たちはきちんとした教育を受けていません。そのため、自分たちの待遇に疑問を持つことさえできず、本当は苦痛を感じながも、これで幸せなのだと自分たちに無理矢理言い聞かせているだけなのかも知れません。

そう考えるとやはり「しもべ妖精福祉振興協会」は意義のある活動ですね。

おわりに

映画の『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』も大好きで何回も見ていますが、ハリーが皆から賞賛されている姿を自分で想像している事や、「しもべ妖精福祉振興協会」は本の中でしか描写されていません。まだ映画しか観ていない方は、是非読んでみてください!『炎のゴブレット』は辞書のように太く長いので、読み切る自信がない方はAudible などのオーディオブックで楽しんでみてはいかがでしょうか?私は今回はAudibleで聴いたので、目も腕も疲れずに楽しめました!

 

Amazonの「聴く読書」Audibleの登録はこちらから