本の橋渡し

本の感想を書くブログです。 (たまに映画、美術、音楽についても書ければ良いなと思っております。)

魔法大臣コーネリウス・ファッジの正常性バイアス━━『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(本)

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今回は、『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』(本)について、感想を書いていきたいと思います。J.K. ローリングによるファンタジー小説『ハリー・ポッター』シリーズの第5巻です。2003年に初版が発行されました。

 

前作の『炎のゴブレット』では、三大魔法学校対抗試合の最終課題で、ハリーとセドリック・ディゴリー(ホグワーツ校の代表選手)は同時に優勝杯を掴みました。しかしその優勝杯がポートキー(移動キー)にすり替えられており、リトル・ハングルトン墓地へ送られてしまいます。そこでセドリックは闇の帝王ヴォルデモートの命令でピーター・ペティグリューに殺されました。ハリーはセドリックの亡骸を学校に連れて帰り、ヴォルデモートが復活するのを見た、と皆に知らせます。それにも関わらず、魔法大臣コーネリウス・ファッジはハリーの言葉を頑なに信じようとしません。それどころかハリーを狂人扱いし始めました。

 

 

 

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当書『不死鳥の騎士団』では、ヴォルデモートが復活したという現実を受け入れることの出来ないファッジの行動が徐々にエスカレートしていきます。

魔法界の新聞『日刊預言者新聞』に圧力をかけ、ヴォルデモート復活に関する報道はしないように情報操作したり、魔法大臣上級次官であるドローレス・アンブリッジを『闇の魔術に対する防衛術』の教授としてホグワーツに送り込み、教育にまで干渉してきます。

一体なぜ、ファッジはそんなことをするのか?

それは、ヴォルデモートが戻ってきたという事実を受け入れれば、これまで14年間ファッジたちが魔法省で築いてきたことが覆されてしまうからです。

ホグワーツ校長のダンブルドアも、ヴォルデモートとの戦いに備えなければならない、と幾度となくファッジの説得を試みましたが、ファッジは猛反発します。

 

そんなファッジの態度を読んで、私の頭の中に浮かんできた言葉が『正常性バイアス』です。

『正常性バイアス』とは、心理学用語で、災害、事件や事故などの事態に直面した際に、都合の悪い情報を無視したり、過小評価する認知の特性のことです。

避難指示が出ても「自分は大丈夫だろう」、非常ベルが鳴っていても「きっと点検か何かで、今回は大丈夫だろう」と思ってしまう、あの心理ですね。

きっとファッジは心のどこかで、ヴォルデモートが復活したことは、分かっていたのではないかと思います。何か対策を練らなければいけないが、そうすれば闇の帝王の復活を認めたことになり、自分の地位や築き上げてきたものが崩れ去ってしまう、、、そんな恐怖から、ハリーを狂人扱いすることで、自分の心の平穏を保とうとしていたのだと思います。

 

その後、魔法省で実際にヴォルデモートの姿を直接自分の目で見て、やっと彼の復活を認めたファッジ。ダンブルドアが警告し始めてから1年が経っていました。もっと早く復活を認めていれば、しっかりと戦いに備えられたかも知れないのに、、、と言いたいところですが、何か決定的な証拠を自分の目で確かめないと認められないのが人間ですよね、、、

 

ハリー、そしてハリーの親友である、ロン、ハーマイオニーを含むホグワーツの生徒たちの何人かは、実戦的な防衛術を学ぶために『ダンブルドア軍団』を密かに結成し、座学しか教えないアンブリッジに対抗します。アンブリッジにバレたら退学、という危険を冒しながら行動する彼らの姿を読み、自分の頭で考えて危険に備えることの大切さを学びました。

 

本記事では、魔法大臣コーネリウス・ファッジの心理に注目して書きましたが、ハリーの名付け親シリウス・ブラックの学生時代の過去や、ブラックの屋敷しもべ妖精クリーチャーに対する態度などにも是非注目して読んでいただきたいです!

 

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前作『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(本)についての過去記事はこちら↓

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