本の橋渡し

本の感想を書くブログです。 (たまに映画、美術、音楽についても書ければ良いなと思っております。)

''こつこつ''継続する、という事━━『羊と鋼の森』(文春文庫)

 

 

今回は2016年に第13回本屋大賞を受賞した「羊と鋼の森」宮下 奈都(文春文庫)の感想を書いていきたいと思います。

それまでピアノを触ったことさえなかった外村青年が、偶然にピアノ調律師の板鳥と出会い、その後調律師として成長していく物語です。

2018年に映画化もされています。

 

「焦ってはいけません。 こつこつ、こつこつです」

宮下 奈都 (2018-02-09). 羊と鋼の森 (文春文庫) (Kindle の位置No.173). 文藝春秋. Kindle 版. 

 

楽器店に就職し、調律の技術を上げるためにもがいている外村青年に板鳥さんが言った、この言葉が印象に残っています。

 

情報社会を生きる私たちにとって、とても大切な事なのではないでしょうか。

スマホやパソコンをタップすれば、一瞬で検索結果を見ることが出来るし、買い物することも出来てすぐに荷物が届く。

この時代に生まれて幸せだとつくづく思います。

 

一方で、そのスピードに慣れ過ぎてしまったことにより、色々なことに対して待てる時間が短くなってきている気がします。

スマホやパソコンの処理速度は日に日に速くなっていきますが、私たち人間が成長するスピードはそうはいきません。

例えば、新しい職場で仕事を覚える時や、語学・楽器を習得する時。

私もたまに「なかなか出来るようにならない、向いていないのかな」と思ってしまうことがあるのですが、諦めてしまう前に、「自分は今まで本当に''こつこつ''を継続してきただろうか?」と自問自答した方が良いかもしれませんね。

難なく仕事をこなしている同僚・先輩、外国語がペラペラな人、憧れの演奏家。

その人たちも見えないところでずっと''こつこつ''を継続してきたのかもしれません。

もちろん中には、特に''こつこつ''努力しなくても出来てしまう人もいるでしょう。

しかし、その人たちとは生まれ持った才能や育ってきた環境が違うのですから、自分が''こつこつ''継続の段階をすっ飛ばして諦める理由にはなりませんね。

 

主人公の外村青年の''こつこつ''の姿勢には目を見張るものがあります。

・先輩調律師たちが言ったことをいつもメモし、熟考する。

・通常業務が終わったあと、夜に楽器店ピアノを使って調律の練習をする

・毎晩ピアノ曲集を聴きながら眠る

などです。

全て当たり前の事なのかもしれませんが、意外とこういう地道な努力は怠ってしまいがちです。

 

その道のりを一歩ずつ確かめながら大事に進むからこそ足跡が残る、と外村青年は考えています。

失敗したり、つまずいたり、迷った時は、「自分が''こつこつ''と残してきた足跡を遡って確認すれば大丈夫。」と思うと、少し安心出来るかもしれません。

 

自分がなかなか前に進んでいる実感がなく焦っている時に、また読みたい本になりました。

外村青年の姿勢が''こつこつ''を続ける力をくれそうです。